どんな部屋にもあわせやすい!暮らしの知恵が詰まった日本の「土壁」

via Koji Hiro with respect

日本の風土に見合った、古き良きくらしが見直されつつある今。

かつての人々が築き上げた、家づくりの知恵と技術に「土壁」が挙げられます。

素朴で自然な風合いが目を惹く土壁ですが、それ以上に日本人の生活を支えてきた、奥深い魅力にあふれています。

近年は和室・洋室を問わず建築業界やDIYで注目を集めている、見逃せない素材です。

土壁とは

土壁は、土に砂や藁・麻を混ぜた塗料で出来た壁を指します。

竹や木を組んだ芯材の上から、時間をかけて何度も塗料を塗りこむため、耐久性が抜群。

日本では古くから多くの建物に用いられ、長い歴史を支えてきました。

材料を混ぜて発酵させることで強度が増し、自然素材ならではの質感が魅力。

建築様式や技術の変化に伴い、一時は衰退してしまった土壁ですが、近年は再度その素晴らしさが見直されています。

砂壁との違い

土壁よく似たものに、砂壁があります。

土壁同様、年数の経った古民家や和室に多くみられ、ザラザラとした質感が特徴です。

もし、壁の材料が土か砂か、見分けが難しい場合は、霧吹きで水をかてみましょう。

水を吸ったら土壁、はじいたら砂壁です。

砂壁は土壁と同じく自然素材で、ほとんど共通の特性を持っていますが、壁に塗る際の糊に化学物質を用いる場合があります。

土壁が持つ、4つの魅力

古民家の壁によく用いられるせいか、なんとなく「古い」「ダサい」のイメージに縛られがちな土壁。

しかし実は、長年の知恵と技術によるすぐれた魅力にあふれています。

上手に取り入れれば、古民家に限らず現代の家づくりにも適用可能です。

ここでは、土壁が持つ4つの魅力をご紹介します。

通気性と調湿・調温機能あり

土壁には、目では見えない小さな穴が無数にあり、空気や湿度を調節する機能を備えています。

日本の気候は亜寒帯から亜熱帯までさまざまですが、夏はとにかく湿度が高く、冬は冷え込んで乾燥するのが特徴。

古民家は構造の特性上、気密性は低いものの、土壁が自然な換気と温湿度をコントロールしてくれるのです。

1年を通して寒暖差がはげしい気候に対応するため、現代の建物の多くは気密性を重視した設計ですが、そのぶんエアコンや換気設備が必須。

土壁は壁そのものが呼吸してくれるため、いつでも家の中に新鮮な空気が入り、1年を通して快適にすごせます。

防火効果

木造建築が主流の日本家屋は、しばしば火災に悩まされました。

特に冬は乾燥するうえ、家庭内のかまどや囲炉裏で火を焚く習慣があったため、火事には細心の注意が必要です。

土壁は調湿作用があり、適度に湿気をふくむことから、防火効果の役割を兼ねていました。

実際、昔から火を消す際「火の元に土をかける」という方法が用いられ、土壁が家を火災から守ってくれるのは、納得ですよね。

自然素材で、身体と地球にやさしい

土壁の最大の魅力のひとつは、やはり「自然素材」ということでしょうか。

現代のように科学の力が発展していなかったかつての世界では、身のまわりにある土や植物を利用した壁は、住居を作るうえで当たり前でした。

今では豊富な塗料が存在しますが、健康や環境への懸念が拭いきれません。

また本来、その土地にあった材料を使用することで、丈夫で機能的・長く使える家が建てられるという考え方があります。

地元の素材による土壁を選ぶことで、輸入に頼らず余計なエネルギー・化学物質も出ないため、身体にも地球にもやさしい家が生まれるのです。

世界にひとつだけの仕上がりに

土壁を塗るには専用の道具と、何より人手が必要です。

プロの左官の腕によって塗りの技術・センスは異なるため、土壁の仕上がりが随分変わります。

均一に塗る以外に、わざとムラや模様を付けたりと、アレンジは自由自在。

DIYでも個性あふれる壁づくりを楽しめ、自分だけのオリジナルを作れるのは大きな魅力です。

土壁にする際の注意点

ここまで土壁の魅力・メリットをお伝えしましたが、中にはいくつか注意すべき点もあります。

大切な家と長く付き合うためのポイントを押さえれば、注意点は決して「デメリット」にはなりません。

土壁を取り入れる前に知っておけば、今後の工夫に役立つはずですよ。

ひび割れによるメンテナンスが必要

土壁は時間の経過や環境の変化とともにすこしずつ乾燥が進み、やがてひび割れが生まれます。

長らく放っておくと、触っただけでボロボロと崩れてしまうことも。

その場合は、もう一度上から土壁の素材を塗りなおしましょう。

家じゅうの土壁を一度に塗りなおすのが大変なときは、部分的に上塗りするだけでもかなり改善します。

定期的にメンテナンスをすることで、土壁は長年使える優れものです。

工期が長い

土壁を施工するには、塗料の発酵・塗り重ねる前の乾燥工程が必要です。

特に乾燥は、人工的に無理やり乾かすとひび割れてしまうため、自然に乾くのを待たなければなりません。

そのため、土壁の出来上がりにはどうしても時間がかかります。

完成までの時間を把握し、計画的に行動するのが、土壁と長く付き合う秘訣といえそうです。

漆喰・珪藻土を併用して、強度と趣をUP!

土壁は、素朴な風合いやカラーがうつくしく、そのままでも十分に魅力があります。

しかし「ボロボロと崩れる」点を懸念する方もいらっしゃるでしょう。

その場合、土壁の上に同じ自然素材の漆喰珪藻土を塗り重ねるのがおすすめです。

どうしても劣化は避けきれませんが、土壁とあわせることでメンテナンスの頻度減少は期待できます。

科学素材ベースのペンキや壁紙と違い、土壁が持つ本来の機能をキープしながら強度を上げ、今までとはまた違った魅力を楽しめるのもメリット。

2つとも、塗料選びの際によく見かける素材ですので、大まかな違いを把握しておきましょう。

漆喰

漆喰とは、石灰石を焼いてできた塗料のことで、やわらかな乳白色が特徴です。

古くから日本の建物に用いられ、江戸時代以前からお城・蔵といった建物にも使用されてきました。

カビや菌の繁殖を抑え、土壁の耐久性をあげることができる優れもの。

ツヤのある仕上がりで、古民家はもちろん洋間にもあわせやすいのが魅力です。

珪藻土

近年、バスマットといったアイテムにも使われる珪藻土は、化石化した植物性プランクトンが詰まった地層から採れ、吸水性・通気性にすぐれた素材。

樹脂などを繋ぎに用い、古くから塗料のほか、レンガ造りにも活躍しました。

漆喰とほとんど同様の性質をもちますが、仕上がりはややざらざらした質感です。

素朴な雰囲気を楽しめ、年月の経った古民家のムードによくマッチします。

土も自然の恵み。土壁と上手に付き合って、快適な暮らしを

地球の資源である土や植物は、長い年月をかけてわたしたち人間の暮らしの中に活用されてきました。

シンプルな素材で、時間をかけて作り上げた土壁は、生活の基盤となる家の環境を豊かにしてくれます。

機能性や耐久性はもちろん、何よりそのうつくしさが、日々の暮らしの質を上げてくれるはず。

自然の恵みを感じながら、土壁のある暮らしを送ってみませんか?

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