古民家暮らしをはじめる前に。意外と知らない「間取り」の話

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働き方や生活スタイルの見直しに迫られるいま、都会のアパート・マンションではなく、昔ながらの古民家に暮らしたい!という方が増えています。

一方で、西洋の様式を取り入れた現代建築とは違い、古民家は基本的な構造や間取りが独特なため、移住や購入に迷うのではないでしょうか。

ゆくゆくは古民家を購入・リフォームをしたいと思っていても、古民家について基本的な知識がないと、なかなか先に進めないもの。

ここでは、まず「古民家って何?」という話から、古民家によくある間取りにフォーカスを当てて解説します。

古民家とは

古くから人々の生活に欠かせない存在のひとつが、家。

人類の発展と共に建築技術も発達し、国や地域に沿った住居が建てられました。

特に四季がはっきりしていて、夏と冬の気候に大きな差がある日本では、いつでも快適に過ごせるよう、古くから構造や間取りにさまざまな工夫がなされてきました。

今でこそ「古民家」と呼ばれる建物ですが、実は多くの知恵が凝縮された、とても実用的な住まいなのです。

「古民家」の定義

ひと口に「古民家」といっても、ただなんとなく古い家、というだけでは分かりにくいですよね。

本来、古民家の定義はあいまいですが、一部では以下のように定められています。

一般的に古民家とは建築後50年経過した建物とされるが、
一般社団法人全国古民家再生協会での「古民家」の定義は、昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする。

「古民家」の定義について | 一般社団法人全国古民家再生協会

この説明から分かるように、古民家の構造は現代の耐震基準とは異なる場合があります。

しかし、今でも多くの古民家が現存することを考えると、長年の知恵と技術によって地震に耐えうる造りになっている、ともいえそうです。

古民家と現代住居の違いは「構造と間取り」

現代の建物と古民家の主な違いは、大きく分けて2つあります。

まずは、土台・構造の部分です。

柱の多さや梁は日本家屋独特の形で、近年の住宅にはあまり見られません。

リフォームの際に耐震・耐熱工事が必要な場合が多いといわれる理由は、古民家の基本的な構造の違いによるものです。

古民家にはもうひとつ、間取りの違いが見られます。

壁やドアでいくつもの部屋に仕切られる現代住居とは異なり、古民家の多くは、ふすまや障子を用いるのが一般的。

大広間を丸ごと1部屋として使えたり、ふすま・障子で仕切って寝室にしたりと自由自在なのがメリットです。

しかし現代の暮らしにおいて、リビングと寝室・仕事部屋といった、用途にあわせた部屋づくりをしたい!という方も多いでしょう。

自分好みにDIY・リノベーションするためにも、古民家独特の構造と間取りについて理解しておくことは大切です。

伝統的な古民家の間取り

戦後から一気に建てられた現代の住居とは、基本的な構造も間取りも異なる古民家。

初めて古民家で暮らすとなると、戸惑うことがあるかもしれません。

しかし、長い時間をかけて生まれた知恵は、実用性に優れていることも確かです。

ここでは、古民家で暮らすうえで知っておきたい、古民家の間取りについてご紹介します。

古民家によくある間取りを知り、生活の中で上手に活用すれば、日々の暮らしがもっと快適に、楽しくなりますよ。

土間

「土」という言葉が見られるように、土間は靴を履いたまま家の中を移動できる空間のこと。

昔の古民家は、土間と台所が地続きになっていることが多く、畑で収穫した野菜を土付きのまま置いたり、客人とちょっと話をするのにぴったりの場所でした。

玄関・お勝手口を繋ぐ通路のような役割を担い、土足で行き来できるメリットから、現代では作業スペースや物置として見直されています。

土間は、伝統的な赤土をブレンドして固めた三和土(たたき)のほか、近年はコンクリートやタイル・砂利で仕上げる場合もあります。

茶の間

茶の間は、いわゆるダイニングルームとして活用されてきました。

部屋の中央に四角くくぼんだ鉄製の囲炉裏(いろり)を設置し、食事の調理や暖をとりながら、家族の憩いの場としても大切な存在です。

柱や梁の一部が真っ黒になっていることがありますが、これは囲炉裏の火で燻された名残り。

茶の間は日常のあらゆる場面を繋ぎ、人々のコミュニケーションを生み出す重要な空間でした。

広間(田の字型)

土間を一段上がると、畳が敷かれたスペースが広がります。

広間は和室全体を指すことが多く、ふすまや障子で自由に仕切ることができる、変幻自在な空間です。

農家や武家の多くは「田の字型」といわれる、大広間を4つに仕切れるスタイルが主流でした。

家族の寝室として、ゲストルームとして、食事や団らんの場として、実に幅広い使われ方をしています。

現代の住宅は、壁やドアで仕切られることがほとんどですが、ひとつの大きな空間を有効に使うために、古くからの知恵で長く愛されてきたのが広間です。

縁側

庭を一望でき、ゆったりとした時間を過ごせる空間、縁側。

厳密にいうと縁側には2種類あり、部屋の外に板を設けた「濡れ縁」と、広間をぐるりと囲う廊下のような「広縁」に分けられます。

部屋と外の間のような役割を果たすので、部屋に直接外気・日光が入るのを防いだり、デッキやバルコニーのように利用できたり。

縁側があれば家の空間が広く見えるのもメリットです。

外と内の境界があいまいな日本家屋独特の文化といえる縁側ですが、ちょっとしたプライベートな空間でもあるため、家族やゲストとの交流の場として活用できますよ。

暮らしの知恵が詰まった、古民家の間取りの魅力

プライベートな空間と生活スペースを分けてきた現代の建築様式ですが。近年はたらき方を見直す動きが高まり、本来の日本の暮らし方も再考されつつあります。

古民家には、長い時間をかけて生み出された知恵が結集され、独特ながらも実用性に溢れた間取りを持つ、魅力的な場所。

家族や地域の人々を繋ぐ「コミュニケーションの場」としても最適です。

間取りの知識を身に着けて、DIYやリノベーションを考える前に、ぜひ「古民家の間取りを活かす」ことも検討してみてはいかがでしょうか。

きっと、先人の知恵が詰まった古民家の間取りは、現代に暮らすわたしたちにとっても役立つ場面があるはずです。

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