なければ自分で作ろう!ノルウェー人の DIY 精神のレベルがプロ級に高くてすごい

あまり想像つかないかもしれませんが、実は DIY がスタンダードなノルウェー

DIYはノルウェー語で「Gjør det selv」といわれ、英語の「Do it youself」と同じ意味を持ちます。

戦後イギリスでDIYの概念が生まれて以降、その流れはやがて北欧にもやってきましたが、古くからモノを長く・大切に使う精神が守られてきたノルウェーでは、今でもさかんにDIYが行われています。

世界じゅうで盛んにおこなわれているDIYですが、北欧ノルウェーにフォーカスした「ノルウェー人のDIY精神」について、筆者の体験談を交えながらご紹介します。

後半には実例も載せていますので、ぜひ現地で行われているDIYの雰囲気を感じてみて下さい。

ノルウェーの家事情からみる、DIYの大切さ

まず、ノルウェーでは美観法が制定されています。

町や環境の景観にふさわしくないと判断された建築プランは、自治体によって却下することができるというものです。

町を散策すれば、古い建物の内装をリノベーションした店舗が並び、田舎には古くから立ち並ぶ、素朴な木造の家々が見られます。

多くの建物が世代を超えて大切に使われるため、経年変化と共にさまざまな箇所で修理・改修が必要になってきます。

そんなとき、ほとんどの人々が選ぶのは、自分たちで直す「DIY」。

歴代の住人たちによって少しずつ手が加えられ、命を吹きこまれたノルウェーの家は、訪ねるたびにたくさんの物語を見せてくれる、魅力的なものばかり。

小さなころから家の修理や庭の手入れを手伝い育った子どもたちは、大人になると自分たちの住まいをDIYでカスタマイズします。

親から子へ、ノルウェーのDIY精神は時代を超えて、粛々と受け継がれているのです。

ノルウェー人がDIYをする理由

家事情が深く関係しているノルウェーのDIYですが、何でも手に入る便利なこの時代、なぜわざわざ自分たちの手でモノづくりをするのでしょうか。

筆者は実際にノルウェー・オスロに暮らしてみて、自身の体験や周りの様子から「なるほど!」と腑に落ちる理由をいくつか発見しました。

ここでは「買い物の選択肢」「業者の仕事スピード」「余暇時間」の3つの観点から、ノルウェー人がDIYにコミットする理由を見ていきましょう。

買い物の選択肢が少ない

今でこそ、スーパーに行けば海外からの野菜や果物が豊富に揃うノルウェーですが、少し前までは「じゃがいもとキャベツくらいしかなかった」という声を聞いたことがあります。

食べものに限らず、ノルウェーで何か買い物をする際、首都オスロでも日本に比べると「買い物の選択肢が少ないな」と思うことがしばしばありました。

大手通販サイトもなく、欲しいと思ったモノがすぐに手に入る環境ではありません。

結果として「ないモノは自分で作ってしまおう」「壊れたら直して使えばいい」という発想の転換から、身のまわりのアイテムを自作したり、DIYに着手したりすることが、ノルウェーでは当たり前に起こっています。

お金で手に入るモノの選択肢が少ないからこそ、創造性を駆使してDIYの技術を磨けるのは、生きる力を身に着ける大切なことですね。

スローペースな業者さんの仕事

基本的に、業者によるノルウェーの修理・工事ペースは随分ゆっくりです。

加えて、設備や機械の修理をお願いすれば、値段が高くつくのは想像に難くありません。

筆者がオスロのアパートに住んでいた頃、バスルームの水漏れが発覚し、大家さん経由で業者の方に修理をお願いしたことがありました。

1回目に様子を見に来てから「次に来る」と言われたのは、およそ1週間後。

さらに、次回の修理だけでは終わらず、2回、3回…と、ちょこちょこ道具を持ってやってきては、マイペースに工事を行なっていました。

修理期間は住人にとって不便な仕様のまま放置されるため「もうちょっと早く直してくれないかなあ」と思ったものです。

さすがにバスルームの水漏れともなれば、業者にお願いするパターンがほとんどでしょうが、ちょっとした機械の故障や塗装剥がれくらいなら、自分で直した方が早い!と思うのは当然かもしれません。

自由な時間がたっぷりある

ノルウェーはほかの北欧諸国と比べても給料が高く、基本的に残業がありません。

勤務時間は職種によりますが、オフィスワークであれば朝が早いぶん、夕方までに仕事を終えて帰宅する人が多いです。

ノルウェー人は「仕事は仕事。残りの時間は自分や家族・大切な人と過ごすために使う」という認識のため、仕事後はさっさと家に帰るか、趣味の時間を楽しむことが普通。

また、日本に比べて娯楽施設が少なく、週末は家や自然スポットに行ってゆっくりと過ごすことがほとんど。

そのため、モノづくり・改修にかける時間がたっぷり取れ、より快適な環境を求めてDIYを行なうのです。

実例から見る、ノルウェーのDIY

ノルウェーには、DIYやメンテナンス・モノづくりに関するブログやメディア・雑誌が多く見受けられます。

ちょっとした小物やオーナメントから、壁紙の張替え・屋根の修理といった住宅まわりに関するもの、さらには小屋のような本格的なレシピまで。

豊富なコンテンツの中から、ここでは4つの例を紹介します。

シンプルなものから大掛かりなものまで、幅広いDIYを楽しむノルウェー人たちの様子を、ぜひ想像してみてください。

ちょっとのひと手間で、床のペンキ塗りをきれいに仕上げる

床に白いペンキを塗っている様子

Slik reparerer du hull i et malt tregulv – viivilla.no

おうちDIYの初級編ともいえる、壁や床のペンキ塗り。

しかし、木材に穴や傷があると上手に仕上げられなかったり、ペンキがはがれやすかったりと、見た目も使い勝手も悪くなってしまいがちです。

ちょっとしたことでも、出来るならもっときれいに仕上げて、長持ちさせたい!という願いをかなえるのがこちら。

好きな塗料を木材に塗るだけの簡単DIYに、快適な暮らしのためにこだわるノルウェー人らしい「ひと手間」を加えたレシピです。

ぬいぐるみをスマートに収納

Slik lager du en smart oppbevaringsløsning til kosedyr – Byggmakker

ついつい増えてしまいがち・散らかりがちな、子どものおもちゃ。

お部屋にぴったりな収納ボックスがなかなか手に入らないときは、自分で作ってしまうのが一番です。

こちらのページで紹介されているレシピは、イラストと動画が分かりやすく、誰でも簡単に収納ボックスをDIYできます。

木材や塗料を変更したり、高さ・サイズを自分好みにかステムできるのは、DIYならではの魅力でしょう。

庭にあったらうれしい、手作りピザ窯

Steinovn: Bygg en pizzaovn på kun en helg | Gjør Det Selv

1度の週末で制作できる、お手製ピザ窯の作り方です。

普段の家はもちろん、ノルウェー人にお馴染みの山小屋(Hytte)の庭に設置すれば、ピザやパンを野外で手軽に焼けます。

陽の長い北欧の夏を楽しもうと、野外で食事やバーベキューを楽しむ習慣があるノルウェーでは、ピザ窯は食事・パーティに活躍すること間違いなし。

家族との時間をより上質にするためなら、野外のDIYもへっちゃらです。

自作のサウナ小屋まで!

Utendørs badstue – så enkelt bygger du den selv. | Gjør Det Selv

サウナといえば、フィンランドをはじめ北欧で有名ですが、実はノルウェーには、サウナの文化があまり根付いていません。

公衆サウナが少なくて悲しむくらいなら、自分で作ってしまったら?ということで、サウナ小屋のDIYまで紹介されているから驚きです。

小屋の骨格のみならず、部屋を暖めるのに大切な暖炉まわりの設計まで詳しく解説しているため、じっくり読んで取り組めば、きっと立派なサウナ小屋ができるはず。

楽しみのためなら大掛かりなDIYも厭わないのが、ノルウェー人のすごいところです。

暮らしの不便さと、自由な時間がもたらすノルウェーのDIY精神

日本とほぼ同じくらいの面積に、約530万人がゆったりと暮らすノルウェー。

一見不便なように見える「買い物の選択肢が少ない生活」は、裏を返せば「手を動かせばなんでも作れる」という、自信と幸福を手に入れられるチャンスともいえます。

DIYが暮らしをもっと豊かにしてくれることを、ノルウェーの暮らしが証明しているのではないでしょうか。

日々忙しく、何でも買えば手に入ってしまう”便利”な暮らしに生きるわたしたちが「自分たちで手を動かし、快適な暮らしを手に入れる」ノルウェー人のDIY精神に学ぶことは、きっと多いはずです。

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