DIY精神を無限に広げる!ポートランドのメイカースペース

ポートランドは、アメリカ合衆国の北部西岸のオレゴン州に属する街で、DIY やハンドクラフトなどがポピュラーな存在として親しまれています。

アメリカで 3番目に大きな都市ながら、自然が豊かで住みやすく、環境や表現の自由に関する政策を積極的に推進しています。

町の取り組みと歴史的背景から、ポートランドには家具・インテリアをはじめ、さまざまなものを自ら製作するような、DIY 精神にあふれた人々が集うようになりました。

そんなポートランドには、「メイカースペース」という場所がいくつか存在します。

「DIY 精神」と「時代背景」、そしてそれらを大きく反映するメイカースペースについて詳しくご紹介します。

メイカースペースとは

メイカースペース(Makerspace)とは、モノづくりをやりたい人々が集まる、共同作業スペースのこと。

巨大な倉庫のような建物の中に、作業場とプロ仕様の本格ツールが取り揃い、施設使用料を払えば誰でも自由に利用することができます。

普段は会社勤めをしている人も、退社後や週末に創作活動ができる魅力的な場所です。

ポートランドには、アメリカの中でも DIY 精神が旺盛な人々が多く存在するため、いまメイカースペースが重要な存在となっています。

近年よく見かける「コワーキングスペース」との類似点がありますが、メイカースペースは単純に「仕事として創作をする」だけでなく、クラフトやアート・インテリアのような、実際に手を動かす創作活動の実践スペースといった特色が見られます。

また別名として、Maker studio(メイカー・スタジオ)、Hackerspace(ハッカースペース)などがありますが、ここでは「Makerspace(メイカースペース)」と統一し、中でもインテリアや雑貨の色合いが強いメイカースペースをご紹介します。

なぜ、ポートランドにメイカースペースが誕生したのか

英語で「Do it yourself(自分でやろう)」の略語である DIY の概念は、第二次世界大戦後にイギリスから渡ってきました。

「戦後の町復興」の合言葉として用いられたイギリスとは違い、戦争による街の被害が大きくなかったアメリカでは「趣味としてモノづくりを楽しむ」のイメージが広まっていきます。

そして 2000年代に入ると、ポートランドは人口増加に加え、リーマンショックによるアメリカ全体の不景気に直面する時代へと突入します。

そこで個人スペースの所有や道具の購入が困難になった人々のために、創作の場を提供する目的でつくられたのが「メイカースペース」です。

ジャンルは違えど、同じ「創作活動」の意志をもった人々によるコミュニティとして、メイカースペースは今日までモノづくりの場として大きな役割を担っています。

メイカースペースがもたらすメリット

メイカースペースは、専門的な知識や技術を持たなくても気軽に始められる道具や設備が整っているため、誰でも利用可能です。

そのため、同じ場所に多様な職種・バックグラウンドをもった人々が集まり、普段の生活では聞けないような話ができます。

また、施設によって特化した分野を持ち、規模もさまざま。

目的にあったメイカースペースを利用することで、自分に必要な情報や仲間を見つけることができます。

ひとりでは気づけない創作のヒントやインスピレーションを得たり、出来上がったモノに対して感想・フィードバックを受けたりと、創作のコミュニティがあることによって、単独の作業とは違った発見や楽しさが見つかります。

さらに近年は、現場にとどまらず、オンラインを利用したキットの販売・ワークショップや講義の開催に積極的なメイカースペースも増えています。

現地に足を運ぶことが難しい人も、気軽にモノづくりの楽しさを味わうことができ、暮らしまわりのちょっとした小物や道具を DIY する喜びや充実感を感じられるようになりました。

単純に余暇時間の活用や、道具と作業スペースの利用といった利点だけでなく、情報共有・発信の場として、あるいは暮らしの中にモノづくりを取り入れるきっかけとしても、メイカースペースは大いに役立っています。

個性あふれる、ポートランドのメイカースペース

DIY 精神の豊かな人々が多く集まるポートランドには、メイカースペースや DIY を気軽に実践できるスペースがいくつも存在します。

サブカルチャーが発達したポートランドで、メイカースペースは重要な位置を占めるようになり、多様な設備が揃ったスペースが次々と誕生しました。

今回は、それらの中でもインテリア方面に重点を置き、家具・雑貨の制作が可能な設備を持つ、大小さまざまなメイカースペースをご紹介します。

ADX(Art Design Xchange)アート・デザイン・エクスチェンジ

ADX(Art Design Xchange)は、2011年にアメリカ人女性の Kelley Roy(ケリー・ロイ)によって設立された、ポートランドを代表するメイカースペースです。

作業スペース・スタジオ・キッチン・ギャラリー・イベントスペースなどが揃い、2017年には大幅な増築を行いました。

起業精神にあふれた人々が創作できる場所として、個人・企業関係なく誰でも参加できるコミュニティづくりに尽力しています。

普段の制作・創作の場として以外に、ワークショップや講義・展示といったイベントを定期的に開催し、ADX の利用者が発信できる場の提供も行っています。

普段は別の仕事をしている人も創作時間に没頭する楽しみを作れる場所として、本格的なアーティストやクリエイターが企業や組織とのビジネスチャンスを得られる場所として。

ADX は、そういったモノづくりを通した個人と企業・地域との架け橋の役割も担っています。

1〜3ヶ月単位で、個別スペースもしくはオープンスペースを借りることができるため、集中して作業するもよし、みんなでわいわいお喋りしながら進めるもよし。

ADX は今やポートランドの創作コミュニティとして、地域を支える大切な存在です。

Hedron Hackerspace(ハードン・ハッカースペース)

Hedron Hackerspace(ハードン・ハッカースペース)は、2014年に設立された DIY 向けのメイカースペースです。

現代技術に適応したツールを揃えていることが特徴で、3Dプリンターレーザー・カッターのような機械を利用できます。

会員に登録すれば、月に 1度のトレーニングを受けることができ、道具の使い方を学べる特典も付いています。

資金がないと揃えるのが難しい現代マシーンを共有で利用できる、貴重なメイカースペースが Hedron Hackerspace(ハードン・ハッカースペース)です。

また、メンバーによるミートアップやイベントが定期的に開催され、ひとりでは得られない情報や技術を学ぶきっかけ作りとしても最適な場所です。

ASSEMBLY(アセンブリー)

ASSEMBLY(アセンブリー)は、ワシントンの大学でアート&デザインを学んだ Liz Wright(リズ・ライト)による、小さなスタジオです。

裁縫から染色・レザー加工まで幅広い分野の講師が所属し、多種多様なイベントやワークショップを開催しています。

現在はオンラインをメインにワークショップを開講中ですが、スタジオに集まって講師や参加者と一緒に手を動かす機会も。

インターネット上でも対面でも、誰かと一緒にモノづくりの時間を共有することで、かけがえのない思い出が吹き込まれた、世界にひとつだけのモノを手にできます。

DIY BAR(DIY・バー)

DIY BAR(DIY・バー)は、Jason & Adam Gorske(ジェイソン&アダム・ゴースク)兄弟によって、2016年に設立された、小さな DIY スペースです。

コンパクトな建物には、テーブルや素材・ツールが所狭しと並び、手ぶらで訪れても気軽に製作をはじめられるのが魅力。

モノづくりの場としてだけでなく、チームミーティングや懇親会・展示といった幅広い用途で利用できます。

オンラインショップで試してみたい DIY キットの購入もできるため、おうちで創作時間を楽しむことも可能です。

本格的なメイカースペースほど大規模ではありませんが、暮らしまわりのちょっとした道具を DIY するのにちょうどいい、カフェ感覚で立ち寄れるスペースが DIY BAR(DIY・バー)の特徴です。

個人からコミュニティまで深い関わりを持つ、ポートランドのメイカースペース

先進的な取り組みに積極的なポートランドの町には、「自分で作る」が当たり前な DIY 精神を育む文化が根付いています。

時代背景と町の文化が反映されたメイカースペースは、単なる「モノづくりの場」としてだけでなく、技術や情報を共有する場として、ひいては個々の自活力と地域の活性化を促進する、重要なコミュニティに成長していきました。

ひとりひとりが「自分の手で何かを生み出せること」に喜びを感じ、楽しく生きる自信を身に着けるために、ポートランドのメイカースペースは今日も多くの人々に希望を与え続けています。

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