『Hygge(ヒュッゲ)』とは、デンマーク語で「居心地がいい時間や空間」といったニュアンスで使用される言葉です。
北欧諸国のひとつであるデンマークは、「世界幸福度報告」で常にトップ3にランクインするほど、国民の幸福度が高い国として知られています。
2012年から国連によって毎年データを集計してランキングが発表されています。
– World Happiness Report
また、デンマークに限らず、スウェーデン・フィンランド・ノルウェーなどの北欧諸国は、幸福度調査の上位にたびたびランクインしています。
それに対して、日本は年々順位を下げていき、2020年のランキングでは 62位でした。
いったいこの差はどこから生まれるのでしょうか?
居心地がいい状態である「ヒュッゲ」に、その秘密が隠れているのではないでしょうか?
この特集では、「無理をせず、ゆるく、心地よく毎日を暮らす」ためのヒントとなる「ヒュッゲ」について詳しく追いかけてみました。
Hygge(ヒュッゲ)とは?
Hygge(ヒュッゲ)をひと言で日本語に訳すと「居心地がいい」といった言葉が当てはまりますが、それだけではありません。
「ゆったりとした時間」や「おだやかな心」「無理をしない」といったニュアンスも含まれています。
そして、ヒュッゲは状態をあらわす言葉であり、名詞以外の意味も持っています。
つまり頭で理解する言葉ではなく「心と体で実践して感じるもの」ですので、もう少し感覚的にとらえる必要があります。
それには以下のようなキーワードを含めると、すんなりイメージしやすいのではないでしょうか。
- 快適
- ゆっくり
- 幸福感
- リラックス
- 安心感
- 親しみ
- シンプル
- 気取らない
ただ、こういったものは今までにもトレンドとして存在しましたよね。
「シンプルライフ」や「ヨガ」などもこれに当てはまる部分があるはずです。
また、「丁寧な暮らし」というフレーズがブーム化したこともありました。
ゆっくりシンプルに暮らすなど共通点は多いはずなのに、いつしか聞かなくなった理由には下記のような意見があったといいます。
- 「無理をしていた」
- 「気付かないうちに(丁寧な暮らしを送ることを)強制されていた」
手の込んだ食事を作ってみたり、インスタグラムなどの SNSにその様子をアップしてみたり。
もちろん、それらを楽しめたりリラックスできている間は良いですが、手抜きの食事をつくることにいつしか罪悪感が芽生えてしまったり、SNSで「いいね」の数を追い求めていては疲れてしまうのは当然です。
強制された状態でリラックスなんてできませんよね。
これに対してヒュッゲは、心地よい状態を無理なくつくることにその本質があります。
そしてヒュッゲには、長い冬を耐えなければならない北欧の気候・風土がおおきく関係しています。
デンマークでのヒュッゲの由来
デンマーク人は、長く閉ざされた冬の期間の暗さ、寒さ、退屈さを生き抜こうとしていたからこそ、ヒュッゲを生み出しました。
平凡で退屈、時にはつらい日常までを含めて、認め、祝福し、そして断ち切る方法がヒュッゲだったのです。
毎晩ちいさな陶器のカップで本物のお茶をいれることや、週末には花屋に立ち寄ってテーブルに花を飾ることなど、努力を必要としない「シンプルな儀式」を作ることで、デンマーク人は何気ない日常の 1 コマをを芸術としてとらえました。
気分が晴れない状態のなか、キャンドルに火を灯して1杯のコーヒーを楽しむというシンプルな行為でも、人の精神には大きな違いをもたらすことを体感していたのでしょう。
このようにヒュッゲとは、強制的でストレスがかかるものではなく、あくまで自然な生活の延長線上にあるものとして生まれました。
北欧デザインとヒュッゲ
トレンドからもはやライフスタイルへと発展した北欧デザインにも、ヒュッゲと同じようなメッセージが含まれています。
どれだけ外見の身だしなみを整えても、毎日の生活にふり回されて内面の充足が足りていなければ、すり減っていくばかりです。
根強い人気をもつ北欧デザインは、「おしゃれ・スタイリッシュ・機能性」といった外観の美しさや性能の高さが注目されていますが、何よりも「日々の暮らしを豊かにすること」が念頭におかれています。
100均ショップでマグカップを買うことはできますが、同じ 1 杯のコーヒーを飲む場合でも思い入れのあるカップで飲むかどうかでは、味わいもその時間も違ったものになりそうですよね。
ヒュッゲな暮らしを実践してみよう
ヒュッゲな暮らしの実践はむずかしく考える必要はありません。
居心地のよい状態を作り上げるための、自分だけのささやかな「儀式」をおこなえば良いのです。
- 毎朝お気に入りのカップにコーヒーをいれてひと息つく時間をつくる
- 家族や仲の良い友人と一緒に居心地の良い夜をすごす
- 自分のためだけに手の込んだ料理を作ってみる
- ロウソクに火を灯してボーッとする時間を楽しむ etc.
たとえば以上のようなちょっとした「儀式」を設けるだけで、ヒュッゲの実践は誰にでもできることです。
でも、「こうしなくては」と頭で考えるのではなく、日常生活にヒュッゲが当然あるものとして取り入れることに意味があるように思います。
慣れないうちはメモに「儀式のリスト」を書き出し、「やりすぎないように」と一筆そえて、冷蔵庫などに貼っておくと良いかもしれませんね。
寝るまえに歯を磨くのと同じように、毎日の生活にヒュッゲを取り入れて習慣化してみることも、ゆるく自分らしい生活をおくるための素敵な時間となるような気がします。
普段の暮らしにヒュッゲを取り入れるアイデアをまとめていますので、よろしければ以下のページもご覧ください。

ヒュッゲの特集記事




