『DESIGN CROP(デザイン クロップ)』は、世界中のすばらしいデザインと、デザインにまつわる素敵な暮らしをお伝えする特集コーナーです。
「CROP」とは、グラフィックデザイン方面の用語として「切り取る」といった訳がありますが、一般的には「作物」や「収穫物」といった意味があります。
デザインのすべてをお伝えすることはできませんが、世界中の優れたデザインたちの一片を切り取り、この特集が実りの多いものとなれば幸いです。
目次
「デザイン」ってなんだろう?
私たちの身の回りには、とてもたくさんのデザインがあふれています。
- インテリアデザイン
- 家具デザイン
- プロダクトデザイン
- グラフィックデザイン
- テキスタイルデザイン
- ファッションデザイン etc.
ただ、「デザイン (design)」という言葉の意味をご存知でしょうか?
デザインやデザイナーと聞くと、「アトリエや芸術大学などに通って、専門の知識や技術を持った人たちが生み出すもの」といったイメージがまず連想されるように思います。
でも、「デザイン」という単語には、「立案する・企画する・設計する・計画する」といった意味も含まれています。
参考 英語「design」の意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
これをもう少し噛み砕いてみると、
- 「黒のパンツなら、シャツは白がいいかな?それともグレーの方が落ち着いた雰囲気になるかな?」
- 「お皿が欲しいけど、丸か四角ならどちらが自宅の食卓にマッチするかな?」
- 「今晩ワインを飲みたいからパスタを作ろう。赤ワインならトマトソースがいいかな?それとも濃厚なクリームパスタがいいかな?」etc.
どれも誰しもが日常で考えそうなことです。
でもこれらは、大なり小なり自分が「良い=心地よい」と思うかたちや状態を頭にえがいて計画し、理想のイメージを設計していることのように思います。
もちろん、これだけでデザインのプロになれるとまでは言いません。
でも、自分が「心地よい」と思う状態をイメージして考えることは、すでに十分にデザインしていることになります。
これは視点を変えると、「デザインは私たちの暮らしを、心地よいものに変えるパワーを持っている」と言っても良いのではないでしょうか。
「心地よい」をつくり出せるのがデザインの魅力
デザインに興味がない人でも『北欧デザイン』という言葉を聞いたことがあると思います。
北欧デザインは一時期ブーム化しましたが、現在では流行を通り越してひとつのジャンルを確立するまでになりました。
海外までふくめて根強い人気をもつ理由には、単なる「見た目のオシャレさ」だけでなく、それらを取り巻く環境であったり、幸福度が高い北欧の人々の暮らし方や考え方、生き方が投影されていることも関係があるのではないでしょうか。
また、「心地よい」などを意味する、北欧デンマーク初の『ヒュッゲ』という言葉が話題になったこともありましたが、これも外観的な理由だけではなく、「より良く生きたい」という願いが背景にあるように思います。
日本を代表するデザイナーが語る「デザインへの感度」を高める方法
筆者が通っていた大阪芸術大学には、日本を代表するプロダクトデザイナーである喜多俊之さんが客員教授として迎えられ、実際にそれらの講義を受ける機会がありました。
喜多俊之先生は、イタリアで毎年 4月に開催される家具・デザイン関係において世界最大の規模を誇る『ミラノサローネ』に何度も出展されたり、『ニューヨーク近代美術館(MoMA)』にて作品がパーマネント・コレクションとして永久展示されたり、アジア諸国のデザイン活性化において政府顧問を担当されるなど、まぁ一言で言うとすごい人です。
そんな喜多先生が大学の講義の中でおっしゃっていたことの中で、いまでも印象に残っている言葉が2つあります。
10年以上前のことですので、微妙に内容がズレている点もあるかもしれませんが、ニュアンスとしては下記のように記憶しています。
良いデザインに触れる
すこし頑張ってアルバイトをして、たった 1 度でいいから高級な旅館に宿泊してみなさい。
上質な旅館には、優れた調度品、インテリア、エクステリア、料理の配膳、食材の質、スタッフの心配り等々、五感をフルに刺激する要素で満ちあふれています。
そういった空間に実際に足を運び、どっぷりと浸かり込むことで、デザインに限らず自分の人生における教養に対して、かならずプラスになります。
料理をこだわって楽しむ
凝ったものは作らなくて良いから、細部まで少しこだわって料理してみなさい。
ふだん手に取らない食材を選んでみたり、切り方や盛り付けを工夫してみたり。
食器や鍋などの調理道具に少しこだわってみるのも良いことです。
料理は五感をフルに刺激します。デザインに興味があるなら料理にも少しこだわってみなさい。
先述のとおり喜多先生は、国内外において数々の輝かしい実績をお持ちの方です。
でも、偉そうにしたり気取った様子は一切なく、まるで「少年がワクワクして仕方がない」といった面持ちで目をキラキラ輝かせながら、たくさんのことをお話しされていました。
なんというか、「もう楽しくて仕方がない」といった空気感が、全身からわき立つオーラのように発せられているのです。(笑)
小むずかしく「空間の設計とは?」「色彩の扱いとは?」「デザインとは?」といったことを専門的にくどくど説明するのではなく、「注意深く観察すると、みんなの周りには “美しく素晴らしく興味深いものたち” であふれているんだよ」といったことをさり気なく教わった気がします。
また、講義を通して「課題」を与えられ、それを実際に喜多先生から批評いただくといった機会もありました。
この時もプロ目線で専門的なことだけを解説するのではなく、生徒一人ひとりからその作品の中でこだわった点などを聞き、「うんうん、いいよねぇ」ととても嬉しそうな表情でうなずきながら、時にはそれにまつわるエピソードもまじえて頂きながらと、とても温かくほっこりとしながらも、静かな緊張感とそれにも勝る高揚感につつまれた空気だったことを今でも覚えています。
デザインは誰でも楽しめるもの
「専門的な深い知識を持った人だけが、デザインに触れることができる」。
そんなのは間違いだと思っています。
自分が「良い」と思って選んだマグカップで飲むコーヒーが美味しくて、幸せな気分になれるのなら、それは誰が何と言おうと「正解のデザイン」です。
自分が居心地が良いと思えるインテリアで部屋づくりをしてみたり、散歩して季節のうつろいを五感で感じ、帰りにスーパーに寄って旬の素材を買って料理してみたり、明かりを消してキャンドルに火を灯し、ロマンチックな空間で静かな時間を送ってみたり。
イマジネーションは無限に広がります。
この「デザインのおもしろさ」を、特集を通じて少しでもお伝えすることができれば幸いです。
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